ごあいさつ
当法人は、これまでの社会的養護児童等との関わりを通じて、こども・若者の心の拠り所となる居場所を始め、物づくりや農業体験、就労体験、ピアサポート及び多世代交流の場を一か所でできる拠点として「ちっちゃな村」構想を掲げました。
孤独・孤立しない社会、みんなの笑顔と心の元気があふれるような社会の実現のため、一緒に歩み続けたいという想いにいたり、令和6年3月に「あんそれいゆ陽葵」を設立いたしました。
「支える側」、「支えられる側」という枠を超えて、互いに支え合い、学び合いながら歩み続けますので、今後ともご指導・ご鞭撻のほどをよろしくお願い申し上げます。
「労働者協同組合法人あんそれいゆ陽葵」設立趣旨
趣旨
当法人は、社会生活を営む上で社会的養護の必要な子ども・若者に継続的に寄り添い、かつ地域で育成する環境づくりや地域資源の活用及び関係機関・団体と協働連携を図りながら骨太で健やかな成長と自立を目指す事業を推進する。
現状(子どもの声)
『もう、絶対に大人は信用しない』、『大人から大丈夫かと聞かれるけど、大丈夫だよとしか言わない、大丈夫じゃないって声を出しても何もしてくれないから』、『いつ死んでもいいようにカッターナイフを持ってた』、『あの親の元へは絶対に帰らない』等、大人への不信感と深い傷を負った心の悲鳴である。
また『ご飯の炊きあがる匂いを初めて嗅いだ』、『みんなで話しながら食べたら美味しい』、『おかえり、行ってらっしゃいって言われて嬉しかった』等、家庭のなかで当然経験するであろうことを経験出来ていない子どもの声である。これは、民間シェルターにおいて生活を共にした際に聴かせてくれた虐待等により行き場を失くした10代の少女たちの声である。
彼女らと時間を共に過ごしていくなかで、彼女らの個々の特性をはじめ、思いやりの気持ちや素晴らしい一面に触れることも多かったが、それと同時に、なぜ、彼女らが親から虐待を受け、「あの親のところへは帰らない」と言わせるまで傷を負わなければならなかったのかという怒りさえ覚えた。
児童相談所、警察、学校等に声を上げて助けを求められる子どもは何らかの形で救いの手を差し伸べることができるが、「大人に話しても同じだ」等、心を閉じた、閉じさせられた子どもは置き去りになったままである。
(2)現状(ひとり親の声)
『幼稚園に通う子どもが自閉症と発達障害を持っていて毎朝毎晩暴れている。
医師に相談しても状態は変わらず、行政に相談してもたらい回しされるだけ。相談する気持ちも失せた。』、『子どもを支援する団体はあっても、親がひと時でもゆっくり過ごせる場所、話を聴いてくれる場所がない。』、『特性を持っている子どもの育児で仕事も手につかず、きつい。』等、本当に辛いときに話を聴いてくれる存在や一時的に駆け込む場所もなく自暴自棄になったひとり親の声である。
社会的に孤立しがちなひとり親に対する子育てに係る経済的な支援、就業支援等も必要であるが、相談相手もなく家事・育児、仕事によるストレスを抱え、そこに異性の介入等により虐待や殺人等へ発展するおそれが極めて高い状況にある。
(3)社会的背景。現状
令和4年度における全国の児童虐待相談対応件数は219.170件(前年度比+11.510件)、虐待の内容別件数は心理的虐待129.484件、次いで身体的虐待の51.679件である。佐賀県における状況は、虐待相談対応件数1.085件、平成30年度と比較すると約3倍に増加、内容別では心理的虐待723件であり平成30年度の約5倍、次いで身体的虐待229件であり平成30年度の約2倍の増加である。
令和4年度の警察本部におけるDV事案の取扱状況は377件と過去最多となっており、これらに伴って面前DV(心理的虐待)が増加していると推察する。
また、青少年の自殺に関しても、近年、高校生が列車に跳ねられて自殺、他県において海に入水して自殺等が発生するなど若者が尊い命を失くし、自らの身体を刃物で傷つけ、あるいは薬の大量摂取や薬物乱用等により自殺を図ろうとする事案も発生している。
子ども。若者によるこのような行動の背景には、家庭問題、学校問題、友人関係等が複雑に絡み合い衝動的に行動していることも推察できるが、一方、大人に相談し、あるいは助けてほしいと信号を出したにもかかわらず、これに真摯に対応しなかった人人が存在したとすれば大きな問題であり、重大な責任である。
社会的な現状として、数値から事案の増減は読み取れるものの、これは関係機関。団体が認知した数字にほかならない。虐待被害、暴力被害を受けていても声を出せない当事者の姿は見えてこない。
(4)地域拠点及びアフターケアの必要性
前述した社会的背景を認識し、当事者の声を下に我々が継続可能なことを述べる。
前記施設の退所後、家庭環境や親の監護姿勢も全く変わらぬまま親元へ戻され、親から「お前を信じなければよかった。」と言い放たれた挙旬、家族から孤立し、自立援助ホームで自殺未遂を図る子、親との生活を頑なに拒否し生活保護を受給して隠れるように単身生活を始める子、自宅があるにもかかわらず寮住まいを切望したが、これからの一人暮らしや将来への不安を抱えながら生活している子、親と交際する異性が自宅に入り浸り、親から「出て行け」と言われ友人宅に寄宿する子など様々であり、何のための一時避難であったのか、退所後も孤独で孤立した生活を送っている。
我々は退所した彼女らや相談を受けた精神疾患等を持ったひとり親に時折連絡し、また連絡を受けて傾聴や交流を図りながら自立に向けた支援及び精神的な支援を継続してきた。
継続的支援をしていく中で、子どもたちが心を開き始め、今日では、深夜、夜中に『お母さんに愛されたい。』、『死にたいって思うようになった、話を聴いてほしい。』、と泣き叫んで電話をかけてくれるようになった。
社会経験も乏しく精神的に未熟であり、かつ虐待による傷を負った子どもたちは、「その瞬間」に話を聴いてほしいと求めており、対応を誤ると大人に対する不信感が増大し、将来を悲観して自殺する事案に発展させてしまう。
課題は、このような子どもたちにとって、苦しい時、辛い時、あるいは気持ちを休めたいときに立ち寄れる居場所が存在せず、孤立や孤独感を強く抱えているため、家庭的な環境を提供することにより精神的にも安定し、安心して生活できる自立に向けた生活拠点が必要である。
また、子どもたちは深夜に気持ちが不安定になってくるが、その時間に対応できる行政機関はなく、相談機関はあったとしても面識もなく関係性のない者に心の内を明かしてはくれない。
いつでも誰かが存在し対応できる地域拠点及び退所後、あるいは相談後における継続的なアフターケアに取組む。
(5)ひとり親及び障害を持った子どもへの支援
DVや児童虐待の親に養育された子どもは力で支配することを学び、その子どもが成長過程の中で力により支配するようになり、我が子にも虐待を行う。DV等により相談できる者が存在せず、孤立したひとり親は我が子に暴力等を振るい、あるいは介入した異性が虐待を行う可能性もある。
また、自開症等の特性をもつ子どもたちも、その特性を理解し受け入れてもらえないことで精神的に不安定になり、ひとり親も精神的に不安定となるなど、「負の連鎖」となる。
この「負の連鎖」を断ち切るためには、地域や関係機関・団体と協働してひとり親の孤立。孤独化を阻止し、かつ障害を持った子どもへの支援が必要であり、ひとり親同士が集まりゆっくりと過ごせるひと時の空間や、ひとり親と子どもたちが様々な体験を通して過ごせる「心の拠り所」たる居場所づくりに取組む。
(6)児童虐待、DV防止に向けた講演・研修会活動及び子ども。若者を地域で育成する環境づくり
地域拠点活動により出逢った行き場所のない子ども。若者やひとり親と障害を持つ子どもが健やかに骨太に育つためには、地域との交流を始め、志を持つ若者との交流も必要である。
地域拠点を中心として人が集まり、ボランティア活動、居場所づくり活動に発展させて心が繋がるような交流の機会を設け、孤立。孤独化を生まないように強い絆を作る。
この活動を継続し、この方たちが大人となり、親となって子育てをするようになった際に児童虐待等を行わせないような伴走型のアフターケアに取組む。
また、あらゆる講演会における講師を務め、または研修会を開催する機会を設けて児童虐待やDVがもたらす子どもたちへの悪影響、人権侵害等についての講演活動に取組む。
(7)法人化の必要性(決意)
上記のように、我々は社会的養護の必要な子ども・若者、あるいはひとり親と関わる中で、個々|こ応じた支援、多様な需要|こ応じた事業の推進に取組んでいく。
しかし、個人の力には限界があり、また活動の方向性・方針が異なる者が従事すれば内部分裂ばかりでなく、それが社会的養護を必要とする子どもたちにまで悪影響を及ぼし、事業継続は困難である。
よって、支援者として働く者が平等な立場で、この事業推進者の一人であるという自覚を持ちかつ同じ方向を向いて効果的な支援,こ繋がるよう様々な角度から意見を出し合って、それを反映し、協働して|・くことで活力ある地域社会の実現が可能であるため法人化したものである。
2 申請に至るまでの経緯
令和4年7月15日 労働者協同組合法人設立のための勉強会開催
令和4年8月30日 労働者協同組合法人設立のための勉強会開催
令和5年4月5日 労働者協同組合法人設立のための勉強会開催
令和5年5月27日 労働者協同組合法人設立のための勉強会開催
令和5年6月30日 労働者協同組合法人設立のための勉強会開催
令和5年10月14日 労働者協同組合法人設立のための勉強会開催
令和5年11月8日 労働者協同組合法人設立のための勉強会開催
令和5年11月18日 労働者協同組合法人設立のための勉強会開催
令和5年12月26日 労働者協同組合法人設立のための勉強会開催
令和6年1月15日 労働者協同組合法人設立のための勉強会開催
令和6年2月16日 創立総会の公告
令和6年3月1日 創立総会開催
令和6年3月1日
労働者協同組合法人あんそれいゆ陽葵 代表者 佐賀県伊万里市立花町929番地14 桑原宏樹
参考文献等
- 令和4年度全国の児童相談所における児童虐待相談対応件数(厚労省)
- 令和4年度佐賀県の児童相談所における児童虐待相談対応件数(佐賀県男女参画こども局こども家庭課調べ 令和5年9月7日付)
- 佐賀県DV総合対策会議資料等から引用